ねえねえ、魔理沙。
今度買う土地の境界を確定するんだけど、道路明示申請が必要だって言われたんだよ。
道路明示って何?
道路明示っていうのは市や県が管理している道路と
民間地の境界を決める手続のことなのぜ。
え?道路との境界って決まってないの?
そうなんだ。
道路と民間地の境界はちゃんに決まってないと道路の管理ができないと思うんだが、
筆界確定するときには改めて決め直すというナゾ手続きが必要なんだ。
それで調査士がまた荒稼ぎだね。
いや、この手続きが加わると何かと時間が掛かったり、めんどうごとが掘り返されることがあるから、調査士はあまり歓迎してない人が多いと思うのぜ。
そうなんだね。どんな手続きなのか教えてよ。
じゃあ今日は、道路明示手続について解説するのぜ。
よろしくお願い。
道路明示手続とは?
どんな手続き?
道路明示手続とは、国又は都道府県、市町村などの地方公共団体(以下官)が管理する道路と、民間所有地(以下民有地)の境界を決める手続きです。
業界では官民境界明示と呼ばれることもあります。
道路明示は明示してもらいたい民有地所有者からの申請が必要です。
え?道路との境界を明示してもらうのに、こちらからの申請が必要なの?
じゃ、普段どうやって道路の管理をしてるの?
厳密には決まってない道路の境界
そういう疑問も当然です。
ぶっちゃけ厳密に道路の境界が決まってません。
え?そんなことでマトモな道路の管理はできるの?
大まかにはできるんですが、厳格に行おうとするとトラブルが発生します。
考えられるトラブルは
- 側溝補修の場合
- 道路の再舗装
- 地中配管(水道管、下水管、ガス管など)の工事
これらの工事は行政が直接行うのではなく、外部の工事業者に発注します。
しかし工事範囲を明確にしなかった(というよりできなかった)ため、境界標が破損されたり、民間地に側溝や配管が越境する事例は散見されます。
こういったトラブルは道路を物理的に管理する部署と法律的に管理する部署が違うことが原因のことが多いです。
本来ならそういったことをする際に道路明示をしっかりすべきなのですが、現在の役所は道路明示を行う測量部署を持っていないことがほとんどです。
つまり役所は道路明示する権限は持っているが、明示する能力がない、ということです。
道路明示の種類
道路明示手続には主に2種類あります。
- 明示型 官側から一方的に民有地と道路との境界を指定してくる。⇒管理界
- 協定型 官側と民有地所有者が立会い、協議をして境界を合意する方法。⇒合意界
道路を管理する意味においては明示型が本来の姿と言えます。
また、「筆界は公法上の境界」としているので、行政側が境界を決定するのがスジです。
明示手続の効果
ところが行政側はこのスジを曲げてきます。
道路明示はあくまでも管理界(明示型)、若しくは官民の合意界(協定型)というスタンスです。
筆界を決定するのは登記所の仕事。ワシャ関係ねぇ!
と言わんばかりの態度、解釈です。
その上、協定型方式を採っている役所は測量部隊を持っていないため、その管理界、合意界ですら自前では確定できないのです。
なので民有地所有者側が…
お役人様、オラの土地と道路の境界を決めてくだせぇ…
…と言うのを待っている、というのが実情です。
ありていに言えば役所は自分たちのお金を使って道路境界の明示をしたくないのです。
道路明示の方法
明示型
では道路明示はどうやって申請するのでしょう?
まずは明示型の説明ですが、この方式を採用している役所は自前の測量部隊を持ってるか、外部発注のルートがあります。
ですので、役所が指示する書面を揃えて申請すれば、役所側から「官民境界(道路と民地の境界)はここ!」と指定してくると思います(役所ごとに差異はあると思うので、担当者に確認してください)。
明示型の場合は申請側で測量、作図を行う必要がない役所が多いので、本人レベルでもおそらく申請可能でしょう。
協定型
問題はこの協定型です。
この方式を採っている役所は前述したように自前の測量部隊を持っていません。
ですので申請時点で測量図の提出を求められます。
その場合の測量図は法務局にある図面ではなく、現況測量図と呼ばれる現在の状態を表した図面です。
また、多くの役所が申請地の両隣り、すなわち明示ラインの両エンドの所有者同意を求められます。
この2つが道路明示手続を厄介にしています。
協定型を採る役所が大多数
正直、大半の役所が後者の協定型を採用しています。
自前の測量部隊が必要ないからです。
また、申請人からの申請、両サイド隣接者の同意をもらわないと協定に応じない、というスタイルは、役所側の責任が薄くしやすいです。
また、当事者の言質を取っているため将来のトラブル発生の可能性が下がるため、協定型を採用する役所が多いのです。
専門家に依頼
道路明示の申請は役所が開庁している時間(平日の9:00~17:15の役所が多い)に申請する必要があります。
また、現地立会いを求められる場合もあります。協定型の場合はほぼ100%求められます。
当然現地立会いも役所の開庁時間内です。
こうなってくると一般的な会社員には時間的対応の難しさがあるでしょう。
そうなると専門家に依頼することになると思います。
どの専門家に依頼するのか?
そうなると、どの専門家に依頼すべきなのでしょうか?
行政書士に依頼
法令から解釈するとまず考えられるのが行政書士です。
行政書士法第1条の2に「行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。」とあるからです。
しかし行政書士への依頼は以下の懸念があります。
- 一般的に行政書士には測量の技術、知見がない
- 道路明示申請の目的が筆界確定であるならば、筆界の知見も必要
- 上記の場合、道路明示を行政書士、筆界確定を土地家屋調査士に依頼すると費用がかさみがち
上記のような理由により、現実の道路明示申請は土地家屋調査士が行うことが圧倒的に多く、役所側もその前提で業務をしていることが大半だと思います。
土地家屋調査士に依頼
そのため、道路明示申請は土地家屋調査士が代理することが多く、その後の筆界確定の手続きと合わせて業務を受託することが多いです。
ここで疑問になってくるのは、「土地家屋調査士が道路明示申請書を作成、申請代理をすることは行政書士法違反にならないのか?」
土地家屋調査士による道路明示申請の可否
結論から言えば
土地家屋調査士が道路明示申請書の作成、申請代理することは可能、
と考えます。
理由は土地家屋調査士法第3条第1項第3号「不動産の表示に関する登記の申請手続又はこれに関する審査請求の手続について法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類又は電磁的記録の作成」です。
法令を杓子定規に解釈すれば単純に「登記所以外の官公署宛の書面の作成は行政書士法違反」になります。
しかし実際は公道と接している土地の筆界確定をする際、道路明示無しで法務局が登記処理をすることは事実上ありません。
また、筆界確定以外で道路明示申請をすることもほぼ無い(というか必要ない)ので、土地家屋調査士による道路明示申請書作成は適法、とされています。
もちろん、能力があるのであれば行政書士が道路明示申請をすることも可能ですが、実際は行政書士は道路明示申請をあまりやりたがりません(依頼してもたぶん調査士に業務を投げてくる)。
道路明示済証の意義
事実上の筆界
通常、道路明示申請手続が完了すると「道路明示済証(官民有地境界協定書など名称は様々)」が交付されます。
この書面で明示される境界は建前としては管理界や合意界の意味合いで、不動産登記法上の筆界ではありません。
しかし、実際に登記処理をする登記官側が「この道路明示は筆界とは異なるものだ」という明確な材料でもない限り、この道路明示を(参考に)筆界点として処理します。
なので、筆界とは違う点で明示が下りてしまった場合、後処理が非常にやっかいになる恐れがあるということです。
筆界確認をするつもりもないのに道路明示申請をする人なんてほぼほぼいないからです。
なんだか[道路明示]って微妙なポジションだね。
そうだな。ほぼ筆界確認のための手続きなのに、そこで明示される境界は筆界じゃない、という
日本の役所の縦割り構造そのものだよな。
私の買う土地は境界標がない部分もあるから、
全部ひっくるめて土地家屋調査士にお願いすることにするよ。
そうだな。どうせ道路明示にも筆界確定にも測量は必要だし、
隣接同意を筆界確認書で代用する役所もあるから、
共通部分の費用が兼用できて結局はその方がお得、ってことだ。
今日も解説、どうもありがとう、魔理沙。
どういたしましてなんだぜ。
この記事の評判が良ければ、今度動画にしてみてもいいかもな。
よろしくお願い。
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