ねえ、魔理沙。
今度私の家を建てる土地なんだけど、今は駐車場なんだよね。
じゃあ、宅地への地目変国が必要かもなのぜ。
それがね、今は駐車場だけど登記の地目は畑なんだよ。
そうなのか。じゃあなおさら地目変更が必要だな。
畑や田んぼは農家以外の人は買えないのぜ。
え!それは困るよ!
私のマイホームが~!
じゃあ、農地転用と地目変更について解説しよう。
それでその土地を霊夢が購入できるかどうかを確認するのぜ。
よろしくお願い!
地目変更登記
前回ブログのおさらい
前回のブログで地目変更について解説しましたが、軽くおさらいをしておきます。
- 土地の用途を変更したら1カ月以内に地目変更登記が必要
- 地目変更には登記義務がある
- 地目は1筆の土地に1つだけ:一不動産一登記主義
- 土地の一部の用途を変えたら一部地目変更分筆登記が必要
- 例外① みなし道路には一部地目変更分筆登記の登記義務がない
- 例外② 農地を他の用途に変更しても農地転用許可・届がないと地目変更できない
農地の保護・制限
農地は農地法という法律によって保護されています。
ですので、農地は農家以外に所有権移転するには制限がありますし、農地の用途を変更するにも制限があります。
また、農地は農地法だけでなく、都市計画法、土地改良法など各種法律、地方公共団体の条例などによっても保護されています。
農地法による届、許可が必要なことは比較的メジャーですが、土地改良法や各種条例については知られていないことが多く、土壇場になってそれらが落とし穴になることがあります。
それではそれらについて見て行きましょう。
農地購入時の確認事項
農地の購入を前提とした地目変更登記をする場合、確認すべき事項があります。
この確認を怠ると手続の途中で暗礁に乗り上げることがあります。
- 都市計画区域(市街化区域、市街化調整区域、その他の区域)の確認
- 農業振興地域
- 購入農地の面積
- 土地改良区域
- 対象農地の地方公共団体の条例・許可基準
都市計画区域
都市計画区域とは都市計画法で定められる区域で、国土の利用のしかたを計画する法律です。
無秩序に開発をしてしまうと効率的なインフラ整備や適正な土地利用ができなくなるからです。
例えば、工業区域のそばに農地があると郊外による農作物の汚染の恐れがありますし、繁華街のど真ん中に住宅地を作るのも何かと不都合です。
農地については以下の区域区分(都計法§7)が重要で、それぞれで農地転用の手続きが変わります。
- 市街化区域:積極的に農地から宅地への市街化を進める区域 = 農地転用届
- 市街化調整区域:原則的に農地として利用する区域 = 農地転用許可申請
- 非線引き区域:区域区分が定められていない都市計画区域 = 農地転用許可申請
農業振興地域
都市計画法はその名の通り都市開発に主眼を置いていますが、それとは別に農地のための法律もあります。
それが農業振興地域の整備に関する法律(以下農振法という)で、その法律でも区域区分があります。
これらは農地の生産性、立地などで都道府県が指定しており、許可権者は都道府県知事、指定市町村長です。
手続きに携わる者の肌感として、農用地除外、許可はかなり厳格な印象です。
- 農業振興地域
- 農用地区域:原則転用禁止
- 農振白地地域:上記以外
- 第1種農地:原則不許可
- 第2種農地:条件により許可
- 第3種農地:原則許可
- 農業振興地域外:市街化区域であれば転用可能
購入農地の面積
購入予定の農地の面積も重要です。
面積によって手続・許可権限者が異なったり、各種条例に引っかかる場合があります。
下の図のように30a以下かどうかで手続の流れが違います。
また、4haを超える場合は農水大臣との協議も必要となります。
また、各地方公共団体によりその他の面積要件、制限が入ってくる場合もあります。
これらのことは役所、農業委員会と事前相談などをして確認します。
土地改良区域
農地には土地改良と呼ばれる農地の区画整理事業があります。
土地改良法によって規定されています。
購入予定の農地が土地改良法による換地処分を受け、工事完了年度の翌年度から8年間を経過しない場合は農地転用できません。
土地改良は効率的な農地運用を行うための事業です。
土地改良区組合運営費用、工事費用など多額の税金を投入して事業をしているので、簡単に他の用途に転用してもらっては困る、という理屈です。
土地改良による換地処分の年月日は『登記記録の原因及びその日付〔登記の日付〕』欄に記載されています。
この日付が8年以内だと農地転用できません。
上の例だと換地処分が昭和55年(1980年)7月26日なので、翌年度の昭和56年(1981年)4月1日から起算して8年間。
つまり平成元年(1989年)3月31日までは転用できないということです。
対象農地の地方公共団体の条例・許可基準
以上に加えて、農地はいろいろなローカルルールが設定されていることが多いもの。
なぜなら農業は気候、天候、水利、ロケーションに左右される産業なので、全国一律の基準ですべてを規定するのは不可能だからだ。
また、各地方公共団体の他の施策が影響する場合もある。
例えば、うp主が業務をする兵庫県神戸市の場合、人と自然の共生ゾーンといった環境・景観保護のための施策があり、追加の届け出書面が必要な場合がある。
このような施策の運用母体は公務員・役人が取り仕切ってるのではなく、地元の農家や自治会長などが世話役を兼務していることが多い。
なので、誰が世話役なのか?その連絡先は?といったことを調べるだけでひと苦労な場合がある。
農用地除外、ネンイチの恐怖!
もし購入予定の土地が農振制度内の農用地区域内だった時は注意が必要です。
農用地区域の農地を農地以外に地目変更しようとすると、農用地区域から除外してもらう必要があります。
そして多くの地方自治体の場合、この農用地除外の申出を年に一度、1カ月程度しか受け付けていないところが多いのです。
行政は農用地区域の農地が虫食い状に転用されることを嫌います。
水利(灌漑用水の運用)や日照、施肥、農薬散布などに影響するからです。ですので無許可転用のような違反が発覚した場合、原状回復(元の農地に戻すこと)を求められたり、申出を却下されることもあります。
かなり厳格に審査されると覚悟しましょう。
農地転用手続き
それらの事前確認が済めば、農業委員会に農地転用のための書面を提出します。
登記が関わる農地転用手続きと呼ばれるものは主に3つあります。
権利変動 | 市街化区域 | 市街化調整区域 | |
3条 | 農地のまま所有権移転 | 届け | 許可 |
4条 | 農地以外に転用・ 権利変動なし | 届け | 許可 |
5条 | 農地以外に転用・ 権利変動有り | 届け | 許可 |
基本的に市街化区域は積極的に市街化を推し進めるので、許可は不要で届出で事足ります。
市街化調整区域は基本的に農地として利用することを前提としているので、転用には審査があり、許可が必要です。
転用手続きをせずに地目変更登記しようとすると、法務局は農業委員会に問合せます。
その時、届け・許可がないことが判明すると登記申請は却下されます。
場合によっては土地を農地に戻す原状回復を命じられることもあります。
まとめ
農地を宅地にするだけでもいろいろめんどくさい手続きがあるんだね。
そうだな。農地転用の手続き自体は難しいものじゃないんだが、
それ以前の要件確認、手続きの方向決定にめんどうごとが多いのぜ。
最後にちょっとまとめてよ。
わかったのぜ。まず、
①区域・地域の確認
購入する農地の都市計画区域を確認して、農振地域内かどうかも確認する。
場合によっては農転手続き自体ができない恐れがあるからな。
あーね。農用地区域除外は1年に一度しか受け付けてない場合があるんだよね。
②土地の面積確認
農地の面積も確認して、役所に相談した方が良い。
面積によって手続が変わることがあるからな。
たいていは役所で事前相談するときに係の人が「農転する面積は?」って尋ねてくるけどね。
③土地改良の換地処分から8年間経過
土地改良は税金を投入して行う事業なので、終了後すぐに他の用途に転用すると行政が困るのぜ。
あーね。土地改良名目で工事をして、他の事業用地として横流…
おっと!根も葉もない邪推はそこまでだ!
④地方公共団体の条例、その他の施策との関連性
農地行政はローカルルールが多いからな。
農地を買って建物を建てるだけでも
・農地転用:行政書士
・地目変更:土地家屋調査士
・所有権移転:司法書士
と、たくさんの専門家のお世話になるんだね。
今日も解説ありがとう、魔理沙。
どういたしましてだぜ。
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