遺産分割協議書と遺言書の違い
ねえねえ、魔理沙。
この間、なくなったおばあちゃんの定期預金を解約に行ったら
銀行に「遺言書か遺産分割協議書を出してください」って言われたんだよ。
ああ、預金名義人が亡くなると口座が凍結されるからな。
遺言書なんてないし、もう一つの遺産分割協議書って何?
遺産分割協議書とは、遺産の分け方を相続人全員で話し合った記録なのぜ。
そうなんだね。でも、遺言書とどう違うの?
遺言書を書くのは被相続人
遺産を残す人(被相続人)が自分の遺産を誰に残すのかを書き残すのが遺言書です。
遺言書には公正証書遺言書、自筆証書遺言、秘密証書遺言があります。
緊急事態のときに書く特別方式についてはかなり特殊なので今回は割愛します。
- 公正証書遺言:遺言内容・存在を公証人が証明する遺言書。信頼性は高いが費用がかかる。
遺言書が亡失しても原本は公証人役場データベースに保管されている。 - 自筆証書遺言:自分で書く遺言。自分で書くため、遺言書の要件を満たしていなくても気づけないことが多く、無効となってしまうことも少なくない。
近年は法務局で自筆証書遺言を預かる制度がある。 - 秘密証書遺言:本人以外に内容を秘密にする遺言。遺言書の「存在」自体の証明は公証人+承認2名が行う。そのため費用はかかる。
遺産分割協議書を書くのは相続人
一方、遺産分割協議書を書くのは遺産を受け継ぐ相続人です。
遺産分割協議は相続人全員が遺産をどう配分するかを決めるための会議です。
遺産分割協議書はその会議の内容を記録した書面です。
遺産分割協議は必ず会議のように一同が会してする必要はないですが、遺産分割協議書には相続人全員の意思が反映されてることを証明するために、全員の署名捺印が必要です。
相続人が未成年のときは、その法定代理人(一般的には両親、親権者)と利害が相反することがほとんどなので、特別代理人を裁判所に選任してもらいます。
遺産分割協議の注意点
遺産分割協議は一人でも抜けてたらやり直し
遺産分割協議は最終的に遺産をどうするかを決めるものです。
法定相続割合や遺言ですらもくつがえして相続割合を決められます。
ですので、相続人全員の意思が反映される必要があります。
それは現在の相続人が知りえない相続人も含まれます。
例えば、被相続人の隠し子や遺言で認知をした子などです。
被相続人の死後、相続でもめるパタンの一つです。
ですので、相続人の追及はしっかりしておかないと、後から手続きの不備が発覚するとやり直し、ということになります。
遺産の徹底追及
遺産の徹底追及も重要です。
遺産が残っているとその分配を決めるためにまた遺産分割協議が必要ですし、万が一負の財産があとで発覚した場合、相続放棄の道すら断たれます。
相続漏れ不動産
相続の業務をするときにちょくちょく出くわすのが相続漏れ不動産です。
住宅の私道持分や墓地、町内会や組合などの管理所有名義などです。
※管理所有名義:町内会や組合など法人格を持たない団体が所有する不動産のための名義。総有という概念の名義のこと。
このような名義が残っていた場合、数世代にわたって権利者が広がるので整理が非常に面倒になります。
遺産分割協議書の役目
不動産相続登記
不動産の相続登記は法定持分割合で登記するのが原則です。
しかし、遺言書があれば遺言に従って登記することができ、遺産分割協議書があればその内容で登記します。
逆に言えば、遺言も遺産分割協議書も調停調書もなければ法定割合以外の登記はできません。
預金や有価証券のような可分財産(分けられる財産)なら良いですが、不動産のように物理的分割が難しい財産の場合は共有となります。
不動産を共有にすると、全員の同意がないとリフォームはおろか、売却などの処分もできません(リフォームについては規模による)。
相続人でしっかり話し合って、できるだけ単独所有とすることをお奨めします。
預金凍結解除
一般的に名義人が亡くなると銀行口座などの預金が凍結されます。
銀行は誰が口座を相続したかがわからないため、誰が相続したかを証明する書面として遺産分割協議書、遺言書、調停調書などを求めてきます。
その他の名義変更
上記以外に自動車や株式などの有価証券といった、名義がある動産についても遺産分割協議書が必要なことがあります。
名義人の死亡を理由に名義を変える場合、役所や証券会社は誰の名義にするのかを知るために必要なのです。
遺産分割協議書のまとめ
遺産分割協議書は相続登記や車などの名義変更に必ず必要な書類ではないですが、法定相続割合や遺言書と違う相続割合にしたい場合には必要な書面です。
しかも、相続人、遺産の追及漏れがあると協議自体をやり直さないといけなくなる重要な書面です。
- 不動産登記
- 銀行口座の凍結解除
- 名義を必要とする動産:自動車や株式など
- 各種手続きに必須ではないが、法定以外の相続手続きをするなら必要な書面
なるほど。遺言書とは役割が違うけど、相続には重要な書面なんだね。
そうそう。遺産は被相続人の意思を尊重するけど、
最終的にその行方を決めるのは相続人なんだ。
今日も解説ありがとう、魔理沙。
どういたしましてなんだぜ!
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