ねえねえ、魔理沙。
私が今度建てる家の敷地だけど、土地を半分だけ買ってそこに家を建てようと思ってるのよ。
そうなのか。
ということは、土地を半分に分筆しないといけないな。
「分筆」ってなに?
分筆とは土地を分割することなんだぜ。
土地を分筆するにはその土地の筆界を確定しなきゃならないのぜ。
そうなんだね。じゃ、そのやり方を詳しく教えてよ。
わかったのぜ!
土地分筆登記とは?
土地の単位は「筆」
土地を分割することを登記の世界では分筆と言います。
理由は登記では土地を数える単位を「1筆(いっぴつ、ひとふで)、2筆(にひつ、ふたふで)」と数えるからで、地租改正の時に「一筆毎ノ、一筆トナス地」と規定されたと言われています。
これも元をたどれば豊臣秀吉の太閤検地に由来する、と言われていますが、真偽は定かではありません。
一物一権主義
土地は本来地続きです。海や川にぶち当たるまでは1個の土地と言えます(海・川の中でも地盤は繋がってますが…)
でも、それでは都合が悪いので土地を区画割りし、その区画内に土地所有者の所有権を設定することにしました。
これを全国で行ったのが明治時代の地租改正です。
そしてそれぞれの区画の地券という書面に所有者の所有権を記載していきました。
これが不動産登記の原型です。
日本の民法では「一つの物には一つの権利」という一物一権主義(いちぶついっけんしゅぎ)の原則があります。
この原則のせいで1つの土地の一部に別の所有権を設定できません(共有を除く)。
土地を分筆して所有権登記
下の図のように、土地を分筆をせずに一部だけに違う所有権を設定できません。
土地の一部に別の所有権を設定するならば、土地分筆をしてからその土地の所有権の登記をします。
この時、分筆した土地には新たな地番が付番されます。
登記記録も別のものが作成されます。
土地分筆登記の手順
土地分筆は筆界調査と登記申請手続に大別されます。
そのうち、業務の比重の9割以上は筆界調査です。
土地家屋調査士の真価は筆界調査で発揮されます。
筆界調査
土地分筆登記をするためには、筆界(土地の境界)をすべて確定させなくてはいけません。
以前は分割する部分の筆界だけを確定すれば良かったのですが、確定しなかった方の土地(残地という)と隣接地が不整合を起こしたり、それに起因する境界トラブルが増えたことから、前筆界を確定することが原則となりました。
そのため、分筆するためには筆界調査が必須となりました。
筆界調査は以下の業務のことを言います。
- 現場踏査(げんばとうさ)
- 資料調査
- 測量調査
- 道路明示手続
- 筆界確認、境界標復元・設置
現場踏査
現場踏査とは測量調査のための下見、ロケハンのようなものです。
土地の状態、境界標の有無、近隣の状態、基準点の確認、越境物等の確認などをします。
また、隣接土地の居住状態の確認も重要です。
空き家・空き地が問題になっている昨今、隣接地所有者が行方不明というのが筆界調査最大の障壁となっています。
理由は筆界の立会いができないからです。
資料調査
資料調査とは法務局や市役所などの資料を調査することです。
- 法務局資料:登記記録、地図、地積測量図、旧公図、閉鎖登記簿
- 県庁・市役所資料:地番参考図、道路管轄、路線図、近傍道路明示資料
- 依頼者、近隣者所有資料:依頼者や近隣の人たちが所蔵する資料
- 地元自治会等の所蔵資料:自治会などが所蔵する古地図、古文書など
- 農協・農業委員会等の所蔵資料:農地や水利についての資料など
- 図書館所蔵資料、新聞社所蔵資料、国・省庁所蔵資料など…
法務局や役所の資料で事足りれば良いのですが、足りない場合は様々なものを手掛かりに調査します。探してる資料が見つからないときは刑事コロンボのような気分です。
測量調査
ある程度資料調査が進めば現場に入り測量調査をします。
測量調査では以下のことをします。
- 基準点測量:測量の基準となる基準点の測量をします
- 筆界測量:対象地及び近隣地、周辺時の境界標の測量
- 現況測量:対象地周辺の建物、構造物(塀、側溝など)、地物(マンホールや電柱など)の測量
道路明示手続
測量調査が進んでいくと、市役所などに道路明示を申請します。
道路明示申請とは対象土地と道路の境界を確定するための手続きで、別名:官民境界明示と呼ぶこともあります。
明示対象は道路だけでなく、河川、軌道敷、公共施設との境界の場合もあります。
道路明示手続の流れはおおむね以下のとおりです。対応する市町村によって手順は異なる場合があります。
- 道路明示申請
- 現地立会い
- 隣接地所有者同意
- 決済
筆界確認
土地家屋調査士が最も胃を痛める神経を使うのがこの筆界確認です。
また、もめたり、争い事が勃発するのもここです。
どんなに測量がややこしくても、ここがスムーズに済めば仕事の半分以上は終わったも同然です。
調査士は私を含め口ベタな者が多いので、ここを最大の関所とする調査士は多いです(笑)
- 隣接地所有者への説明
- 筆界立会い確認
- 筆界確認書への署名押印
境界標復元・設置
境界標復元とは?
対象土地の筆界の位置が確定したら、境界標が無い場所には境界標を設置します。
この場合、本来あるべき境界標を設置することを境界標復元と言います。
このあるべき境界標とはあったのに無くなった境界標だけでなく、未設置の場合も含みます。
なぜ境界標が設置されてないかは拙ブログ『地積測量図 全部同じじゃない信頼性』で解説していますが、簡単に言うと境界標設置が義務出なかった時代があったためです。
分割点境界標設置
対象土地の復元が完了したら、依頼人の意向に沿って分割点となる境界標を設置します。
土地家屋調査士はこの点を分筆点(線)と呼ぶことが多いです。
前面道路幅や土地の接道が建築基準法のギリギリだったりすると誤差がないようにけっこう神経を使います。
(過去記事)後悔しないための筆界確認 7選
登記申請手続
筆界調査が終われば業務の9割方は終了です。
申請書、地積測量図、その他書面を作成し、法務局へ提出するだけです。
最近はオンラインで申請するため、登記所に行くことも少なくなりました。
たまに登記官が現地調査に行く、とか言いだすと、一緒に現地に赴きます。
問題がなければ1週間~10日程度で登記は完了します。
あとは成果を作成し、納品して業務終了です。
まとめ
土地の分筆登記のことはなんとなくわかったよ。
でもちょっとこんがらがってきたので最後にまとめてよ。
よし、わかったのぜ。
土地分筆登記の手順をまとめると以下のとおりだ。
- 筆界調査
- 現場踏査:現場の下見、ロケハン
- 資料調査:法務局、各役所、その他資料の収集・調査
- 測量調査:基準点、筆界、現況を測量調査
寒いとき以外はわりと楽しい(笑) - 道路明示:道路など、官民境界の明示手続
- 筆界確認:隣接地所有者への筆界説明、立会い確認
- 境界標復元・設置:確定した筆界や分割点に境界標を設置
- 登記申請手続:法務局への登記申請
まとめると意外と業務の項目は少ないんだね。
そうだな。でも、2と5に地雷があることが多く、うっかり踏むと業務が年単位で滞ることも珍しくないのぜ。
え”!そんなこともあるの?
こういったことは土地売却時や建物建築時のことが多いので、急いでいる人が多いんだが、調査士の能力・努力だけではどうにもならない部分もあるのぜ。
そうなんだね。事前に境界を確認しておけば、
いざというときに慌てなくてすむんだね。
そういうことなのぜ。
魔理沙!
今日も解説、どうもありがとう!
どういたしましてだぜ!
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